私、元上司と結婚した。
中途で入社した会社の初めての上司。いつも凄く機嫌が悪くて、声かけたり報告してる時もこちらの目を見たことはなかった。コロナ禍でマスクをしてたから、本当に冗談抜きで、マスクを外した顔がどんな顔なのか、正面から見たこともなくてわからなかった。
名前を呼ばれることは月に一度、会議のときだけ。
他の人は名前で呼ばれても、「○○君と、君もね」と呼ばれた。
だけど私が仕事上で契約が流れるかもしれない大ピンチに陥った時は、流石に一緒に動いてくれた。こちらに非はなくて、相手が100%悪かったんだけど、それを相手に納得してもらうために深夜2時までずっと動いてくれて、契約できた。
頭の回転が速い人で、常に何かしら勉強していた。圧倒的な知識と営業成績があって、誰もかなわなかった。だけど周りからすごく嫌われていた。
部下からも、他の部署からも嫌われた。飲み会でも、責任者という立場なのにぽつんと一人だった。私はその飲み会のあと、すぐ異動させられた。
「君の行く先に女性は誰ひとり居ないと思うが頑張ってね」と言われたけれど、実際は女性7割強の部署だった。
「女性だけのプロジェクトチーム作りたいから経験の浅いあんたも呼ばれたの。知らなかった?まああの上司さんじゃ人脈ないから仕方ないね」
と先輩の女性に言われた。
その部署で残業200時間を超え、私は倒れた。倒れたその日、異動先の上司からは「辞めるんですか?」とだけ連絡が来た。
あと、噂を聞きつけた元上司から連絡があった。もう部下ですらない私のために差し入れを買ってきて、家のドアノブにかけて去っていった。
体にいい食事や果物、私が職場での雑談でこのお菓子がなければ生きていけないとまで言ってたドリトスタコス味までちゃんと入っていた。
中には励ましの手紙が入っていた。それを読んで、まあもう少しやるかーと思って2日休んで復帰した。
けれどその元上司は私の体調不良数ヶ月後、いきなり職場からいなくなって、休職の上退職した。
その際、元上司の私物の中でも少しいい傘や鞄は部下が勝手にパクったりしていたらしく、他の部署から顰蹙を買っていた。
唯一元上司のことを庇った男性社員がいて、「あの人いい人なんだよ。会社が壊したんだ。本当にいい人だからさ、俺知ってるんだよ。俺連絡取りたいけど、今あの人外に出られない位らしいんだよ。悔しいよ」と涙目になっていた。
彼が居なくなって一年後、私も退職することになった。
あまりにブラックで、次々と人が辞めていくから。その時例の男性社員が元上司はいい人だと言っていたことを思い出した。
どうしようか悩んだけど、退職することにしましたとラインを入れた。手紙が嬉しかったこと、深夜まで手助けしてくれたことのお礼もした。
すぐ返事が来て、「私さん 次の就職先決まったら連絡してね 無理しないでね。僕は私さんが居てくれて、良かったよ」と返ってきた。
なんだか無性に元上司と話したくなって、ことあるごとに連絡した。
資格試験に受かった、内定もらった、就職した、契約した、そんな話。
そしたら「良かったー!嬉しい」「おめでとう、君は根性あるから。僕も負けてられないね」「僕も就職しましたよー」とやり取りが続いた。で、時間が空いたからご飯一緒に食べませんかと誘われた。
その時初めて元上司の顔を見た。とても優しい顔だった。名前も何度も呼ばれ、沢山話をした。
その後何度も会うようになって、付き合い始めて結婚に至った。
プロポーズされて、「私で大丈夫ですか」と聞いたら、「君だからいいんだよ」と返ってきた。例の上司を庇い続けた男性社員にその旨連絡したら「お祝い!!お祝い渡したい!!言ったろいい人だって!!」と電話越しに泣いて喜んでくれた。
元の勤め先の人達も、元上司が居なくなって一年くらいして、どれだけ元上司が庇ってくれていたか知った人もいたらしい。そういう人たちは、お祝いに飲み会を開いてくれた。
今でも職場での元上司、もとい夫を思い出して、なんとも不思議な気持ちになる。
長い自分語りになったけど、多分生きてる中で一番衝撃的な出来事。
おめ。ええ話やあ
ドリトスはナチョチーズ味、それも輸入版が至高
長文でも見やすくて ネタも面白い
文才あるね
こういう読んでてこっちまで幸せになれる自分語りはいくつあっても構わない。
おめでとう!お幸せに!
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